やる気を引き起こすには

今日は、面倒なことを行うための「やる気」を出すにはどうするか?
と言うお話です。

 

人にやる気を出させる薬があるのをご存知でしょうか。

 

昔、漢方薬の中にマオウと言うぜんそくの薬がありました。
これは気管支を拡張する効能があり、
19世紀以前から使われていたそうです。
でも、使いすぎると変な副作用が出てくることが分かりました。
気分が高ぶるのです。
でも、ぜんそくの薬なので、
気管支だけに効果がある方がいい薬ですよね。

 

と言う事で、
薬の研究者は他にもっといい薬はないかと探し始めたそうです。
これが19世紀ごろの話。
そして見つかったのがアンフェタミンと言う薬です。
これはマオウより副作用が少なく、
ぜんそくにももっと良い効果があるので盛んに使われました。
しかし、これも長く使っていると、
やっぱり気分が高揚してくることが分かりました。
凄く元気になって、
睡眠などとらなくても大丈夫になるのだそうです。

 

「眠らなくても元気って、ひょっとしてそれって覚醒剤じゃないの?」
って思うでしょう?
実はその通りなんです。
今、日本で一番多く警察で押収されている覚醒剤の一つなのです。
昔はぜんそくの治療薬だったんですね。
ノリピ〜も昔だったら捕まらなかったんですね。

 

みなさん、パーキンソン氏病って聞いたことがあるでしょ?
日本では老人の約10%がかかる病気です。
知能は普通なのですが、
「自発的になにかをやる気にならない」
と言う事が病状なのです。
何か新しいことをやり始めることができないのです。
ナマケモノの様に、
手足もゆっくりしか動かせなくなります。
「それ、俺だ!」
とか言わないように!

 

パーキンソン氏病の患者さんの脳を調べると、
ドーパミンと言う神経伝達物質が通常より少ないと言う事が判明しました。
そこで、ドーパミンの原料であるLドーパと言う物質を患者に投与すると、
投与から2〜3時間で病状が良くなることが分かりました。
やはり、犯人はドーパミンらしいと言う事になりますね。

 

さて、先に登場したぜんそく薬のマオウには、
「エフェドリン」と言う成分が含まれています。
これと、覚醒剤の「アンフェタミン」、
そして脳内物質の「ドーパミン」に共通することは何か?
それは、これら3つの化学物質の分子構造が非常に似ていると言う事なのです。

 

そこで、エフェドリンやアンフェタミンに放射線を当てて、
人体に取り込まれたこれらの物質がどこへ運ばれるかを追跡してみると、
なんとドーパミンが神経伝達に使われるときと同じように動くことが分かったのです。
つまり、エフェドリンやアンフェタミンは
ドーパミンと同じ働きをすると言う事になります。
逆に言うと、
ドーパミンは覚醒剤と同じく気分を高揚させるものと言う事になります。

 

では、やる気を出したいときにはドーパミンを飲めばいいと言う事になりそうですが、
ドーパミンを口から投与しても脳内へは届きません。
「う〜ん、残ね〜ん!」
そんな悔しがらなくてもいいです。
ではどうするか?
脳のメカニズムを使って、
ドーパミンの分泌が促されるようなことを行えばいいのです。

 

ドーパミンは人が何か行動を起こすだけでも分泌され、
その行動を継続できるよう、
後押しをしてくれます。
更に、人から褒められたり、
上手くできたりすると、
より多く分泌されます。
そうすると、
「もっとうまくやりたい!」
「もっと成功したい!」
「もっと誉められたい!」
と言う気持ちになり、
さらに努力するようになると言う仕掛けです。

 

逆に、何も行動しなければ分泌されないので、
興味がわかないしつまらない、
楽しくもないので熱中しない、
集中できずにうまくできないので誉められない、
ストレスはたまる一方でやる気が出ずにドーパミンの分泌もない。
脳も活性化しないし機能の低下に繋がる。
と言う結果になります。

 

思い出すのも嫌な受験勉強でも、
机に座って問題集を広げて問題を解き始めれば、
意外と長続きします。
そして、問題が解ければやる気が更に出る。
つまり、ドーパミンのメカニズムがなせる業と言う事です。

 

 

なお、今回書いた内容は以下の書籍を参照しています。

 

東京大学大学院教授 石浦章一著
東京大学超人気講義録
「遺伝子が明かす脳と心のからくり」


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