皆さんは一日の相場の中にも「上昇トレンド」、「下降トレンド」、「保合い」の3つの「相」あるいは「局面」があって、これら3つの相が循環していると言う事はご存じだと思います。ご存じじゃない方も、もし循環しなければ相場はどうなるか、と考えればすぐ理解できるはずです。

 

 もし、いずれかの相が一日中継続するなら、相場は一日中上がりっぱなしか、下がりっぱなしか、横ばいかのいずれかの状態になると言う事。もし、そんなことが起きるなら相場は成立しませんよね。一旦上昇を始めるとずっと上昇が続く事がわかっているのに途中で売ってくるトレーダーは現れませんから。

 

 では、どうして「相」が循環するのでしょうか。一例として、抵抗線ブレイクで価格が上がりはじめるとどうなるかを考えてみましょう。

 

ロングサイドにブレイクする

価格が上がる

買い方は含み益が増える=売り方は含み損が増える

売り方が損切りに動く=成行買い注文が増える

更に価格が上がる

 

 

 ここまでの値動きはいわゆる「踏み上げ」で、チャート上は高値安値を切り上げる陽線ばかりが続くことになります。では、チャートには現れない水面下では何が起こり、何が進行しているでしょうか。局面の推移を考える際に欠かせないのは売り方・買い方の建て玉の積み上がり具合を考えることです。それでは売り買い注文と建て玉数がどういう変化をするか、流れを次の3つの局面に分けて見てみましょう。

局面 → (A)抵抗線ブレイク (B)売り方損切り (C)更に価格上昇
注文 @ 新規建て 増加 増加 増加
A 売り玉返済 変わらず 増加 増加
B 新規建て 増加 減少 減少
C 買い玉返済 変わらず 減少 増加
建て玉数 @ −C 増加 増加 増加
B −A 増加 減少 減少

 

(A)抵抗線ブレイク
 抵抗線では売り方の新規売り注文Bが待っています。この抵抗線をブレイクすると言う事は、売り注文以上の新規買い注文@が入ることを意味します。従って、ブレイクの時点では売り買い両方の建て玉が一気に増えることになります。チャートに出来高を表示すると、一日のうちに何箇所か出来高が飛び抜けて多いところがありますね。支持抵抗線での攻防があったところでは、出来高が突出することになります。
 (B)売り方損切り
 買い方の力が売り方を上回って価格が上昇を続ければ、売り方は抵抗線付近で建てた売り玉の損切りAに動きます。抵抗線のブレイクが成功しているので、新規売り建てBは少なくなり、買い方も利食いを先延ばしするでしょうから買い玉返済Cも減少。また、ブレイク成功を見て追随する買い方が更に新規買い建て@に動きます。
 (C)更に価格上昇
 買い注文@+Aが売り注文B+Cを上回った状態が続き、更に価格が上昇します。一方、ここまでの過程で買い玉は積み上がり、損切りが行われた売り玉は減少していきます。

 

 踏み上げによる上昇が終わりを迎えて相場が次に向かう先は「保合い」、「買い方の利食い」ですね。これも上の例に倣って注文数と建て玉数がどうなるかを見てみましょう。

 

局面 → (D)保合い (E)買い方利食い
注文 @新規建て 減少 減少
A売り玉返済 減少 減少
B新規建て 減少 増加
C買い玉返済 減少 増加
建て玉数 @ − C 変わらず 減少
B − A 変わらず 増加

 

(D)保合い
 ブレイクポイントからある程度の値幅を上昇すると、高値掴みを恐れて新規買い建て@は減少します。また、損切りすべき売り玉もなくなってきて、買い戻しAも減少します。そして、結果として出来高は徐々に減少に転じ、これに比例して価格の上昇も緩やかになっていきます。やがて、価格の上昇も止まって、局面は動きのない状態=保合いに変わっていきます。
 (E)買い方利食い
 出来高が細ってきて価格が動かなくなる保合いになると、買い方は当面のピークに到達したとみて利食いに動きます。売り方の損切りもここに到達するまでには出尽くして、買い注文は減少することになります。一方、買い方の利 食いによる買い玉返済の売り注文と、押し目を取りに行く売り方の新規注文は増加に転じます。もうお分かりのように、この時点では売り注文が買い注文を上回ってくるので、価格が下がることになります。

 

 以上が3つの相が循環するメカニズムですね。かなり単純化して書きましたが、このテーマに関してこれ以上複雑に考えても、それは枝葉の部分だと思いますので、割愛しても何ら不都合はないでしょう。

 

 ここで質問。局面(A)から(E)まで推移した結果、始めと終わりでは相場を構成するいくつかの重要な要素が大きく変化しています。何がどのように変化したでしょうか。

 

 その答えは、まず第一に「時間」です。残りの取引時間が減少しています。第2に値幅のノビシロあるいは上値余地が減少しています。第3に取引の価格レンジが変わっています。これに伴い新たな抵抗線が視野に入ったりします。第4に、出来高が増えたことで、この日の出来高の残量が減少しています。トレーダーは無制限に仕事をしているわけではないので、一定量をトレードすると仕事を切り上げます。よって、出来高の残量はこの後の値動きに影響を与えます。

 

 一つのラリーが終わっても、次の仕掛けポイントを見つけて仕掛けの準備を怠らないのがプロの技術です。一喜一憂せず、常に肉食獣のように目を光らせて獲物を狙いましょう!

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